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納税額を知るのが、いつも直前になる ― 不意打ちの税金をなくす、期中の確認のしかた

決算書ができあがった日に、初めて納税額を知る。金額を見て、手元の残高を見て、納税資金が足りないと気づく——顧問を引き継ぐご相談のなかで、私たちがもっとも多く耳にする不満のひとつがこれです。

そしてこのとき、みなさんが口にされる言葉は、たいてい同じです。「先に言ってくれれば、用意できたのに」

このクライアントの不満は、税理士の知識や技術の差から生じているのではありません。期中に納付の見込みを伝える運用があるかどうか、その一点の差から生じています。今回は、なぜ納税が不意打ちになるのか、そしてそれを防ぐために今日できる確認を整理します。

1. 怒りの原因は、金額の大きさではない

納税額が思ったより大きかったとき、みなさんが本当に困っていること。ご相談をうかがっていると、それは金額そのものではないことが分かります。

利益が出た年に税金が出るのは、当然のことです。多くの経営者は、そのこと自体には納得されています。困るのは、その金額を知った時点で、もう手元に十分なお金が残っていないことです。

入金は仕入や広告費、外注費に回してしまった。設備を買ってしまった。あるいは、単に生活に使ってしまった。知るのが半年早ければ、使い方を変えられた——だからこそ、不意打ちの納税に怒りが向きます。

納税は「金額」の問題ではなく、「知るタイミング」の問題である

これは、顧問税理士との関係を評価するうえでも、とても分かりやすい基準になります。

2. 入ってきたお金のうち、はじめからあなたのものではない部分がある

納税が不意打ちになる大きな原因には、もうひとつのことがあります。それは、売上として入金されたお金のなかに、預かっているだけのお金が混ざっていることです。

その代表的なものが、消費税です。お客様から売上代金を受け取るとき、その中には消費税が含まれています。課税事業者であれば、受け取った消費税から自分が支払った消費税を差し引いて、その残りを納めることになります。つまりその残りに当たる部分は、最初からあなたの利益ではありません

ところが通帳の上では、売上も預かった消費税も、同じ一本の入金として並びます。区別する仕組みを持っていなければ、預かっている分も含めて「使えるお金」として使ってしまうでしょう。

従業員や専門家への支払いから差し引いた源泉徴収の額も、同じ性質のお金です。いったん会社の口座に残るけれど、あなたのものではない。この感覚を持っているかどうかで、納税期の景色はまったく変わります。

「別の口座に寄せる」だけで、多くは防げます

専門的な仕組みは要りません。月に一度、上で述べたような預かり額を別の預金口座に移しておく。それだけで、納税期に慌てる場面はかなり減ります。問題は、いくら移せばよいかを自分で把握しにくいことです。だからこそ、その目安を教えてくれる相手が必要になります。

3. 不意打ちが起きるのは、だいたいこの4つの場面

ご相談を整理すると、納税が不意打ちになる場面は、次の4つにほぼ集約されます。ご自分に当てはまるものがないか、確かめてみてください。

場面1

決算の直後に、初めて金額を知る

ネット物販をしている一人法人の社長は、決算書ができあがった日に、法人税と消費税を合わせた納付額を初めて知りました。売上の入金はすでに次の仕入に使っていて、期限までに用意できた納税資金は半分ほどでした。期中に一度も見込みを聞いていなかったため、準備する機会がありませんでした。

場面2

年の途中に、前年の実績にもとづく前払いを求められる

前期に大きく利益が出た建設業の法人では、その翌期の途中に、前期の実績にもとづく前払い(中間納付)の通知が届きました。その期の売上は前期より落ちていたにもかかわらず、通知の額は前期の水準で計算されていました。社長は中間納付額が「今年の数字とは関係なく決まる」ことを知らず、通知が届いてから慌てることになりました。

場面3

預かっていた消費税を、運転資金として使ってしまっていた

サービス業の個人事業主は、売上と一緒に受け取っていた消費税を、日々の運転資金として使っていました。申告の時期になって、預かっていた分を納める番が来て、初めてそれが自分のお金ではなかったと気づきました。売上が伸びて消費税の申告が必要になった年ほど、この行き違いは起きやすくなります。

場面4

払い終えたあとに、まだ続きがある

所得税を納め終えて一息ついた個人事業主のもとに、数か月後、市役所から住民税の通知が届きました。住民税は前の年の所得をもとに計算されるため、その年の売上が落ちていても、金額は前の年の水準で決まります。事業主は「税金は確定申告で終わり」と思っていたため、二度目の請求が来た形になりました。

4つに共通しているのは、どれも「後から知って驚いた」という点です。逆に言えば、事前に一覧を渡されていれば、いずれも防げた事態ということでもあります。

4. これは技術力の差ではなく、運用の差

ここが、この問題のいちばん大事なところです。

納付の見込みを事前に伝えるために、特別な専門技術は必要ありません。期中で数字が締まっていれば、「今のペースだと、決算のときにこのくらいになりそうです」という概算は出せます。精密な計算でなくても、桁と時期が合っていれば、相応に準備することはできるでしょう。

それでも見込みが直前まで出てこないのは、多くの場合、次のどちらかのケースです。

前者であれば、まず数字が締まる運用をつくることが先です。これについては経理を税理士に「丸投げ」して大丈夫?で詳しく書いています。後者であれば、顧問に納税見込を教えてほしいと頼むだけで解決することもあります。

顧問税理士が期中にどんなものを渡してくれるはずなのか、その全体像は顧問税理士は、ふだん何をしてくれる人なのかにまとめました。納付の見込みは、そのなかでももっとも実害に直結する一項目です。

5. いまの顧問に聞いてみたい、3つの質問

顧問を変えるかどうかを考える前に、まず聞いてみてください。この3つは、遠慮なく尋ねてよい質問です。

納税を不意打ちにしないための質問

  • 今期は、いまのペースだと納税額はどのくらいになりそうですか(正確な額でなく、目安で構いません)
  • この一年で、納付の期日はいつ何回ありますか。それぞれ、いくらくらいの見込みでしょうか
  • 業績が前期より落ちているのですが、前払いの額(予定納税/中間納付)を見直せる場面はありますか。その申し出に期限はありますか

3つ目について補足します。年の途中で求められる前払いは、前年や前期の実績をもとに決まるため、今年の業績が落ちていても、原則、下がりません。状況によっては見直しを申請したり、仮決算を組んで中間申告したりできる場合がありますが、いずれの手続きにも期限があります。

それらの手続きの期限を過ぎてしまうと、払いすぎた分が返ってくるのは確定申告後になります。資金が厳しい時期に、数か月にわたって手元からお金が出たままになるのは避けたい事態でしょう。まず、通知が届いた時点で確認することが重要です。こうした「期限のある選択」の考え方は、「知らなかった」では戻せないものがあるでも扱っています。

そして、質問に対する答え方そのものが、ひとつの判断材料になります。目安でも数字が返ってくるなら、期中の数字が読めています。「決算をしてみないと分かりません」としか返ってこないなら、期中の数字の状態を確認したほうがよいかもしれません。

6. それでも用意できないときは、早く言う

すでに納期限が近く、どうしても納税資金が足りない。そういう段階でご相談をいただくこともあります。

このとき、いちばん避けたいのは期限まで何も言わずに放置することです。期限の前に税務署や役所の税務課に相談すれば、分割や猶予について相談に応じてもらえる場合があります。何も言わずに遅れた場合と、事前に相談した場合とでは、その後の扱いが変わります。

ところが実際には、多くの方が黙ってしまいます。理由は、たいてい「言いにくいから」です。顧問税理士に対しても、資金が足りないことを打ち明けるのはきまりが悪い、と感じてしまう。

けれども、お金が足りないという相談は、税理士がもっとも慣れている相談のひとつです。伝えるのが早ければ、打てる手はそれだけ多く残ります。逆に、言えないまま連絡が止まってしまう状態については、資料を送れないまま、連絡が止まってしまったときもあわせてお読みください。

まとめ ― 「次の納税はいくらですか」の一言から

整理すると、確認の順序はこうなります。

  1. いまの顧問に、今期の納税見込みを聞く。正確な額ではなく、概算と時期で構わない
  2. 一年分の納付カレンダーをもらう。回数と時期が分かれば、資金の置き方を決められる
  3. 預かっているお金を、別の口座に移動する。移す金額の目安を顧問に確認する
  4. 前払いの通知が届いたら、その場で見直しの可否と期限を確認する
  5. 納税資金が用意できないと分かったら、納期限より前に相談する

この5つのうち、1と2は、聞くだけで済みます。そして多くの場合、聞けば答えは返ってきます。顧問の側も「聞かれていないから出していなかった」というだけのことは、決して珍しくありません。

顧問を変えることは、それ自体が目的ではありません。今の顧問との間で解決するなら、それがいちばん早くて確実です。もし聞いても答えが返ってこない、あるいは何度聞いても直前にしか分からない状態が続くなら、そのときに初めて、体制の問題として考えればよいと思います。

まずは、次の面談で一言。「次の納税は、いくらになりそうですか」。そこから始めてみてください。

※本記事で紹介したご相談の例は、実際にお受けした複数のご相談をもとに、内容を匿名化・再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。

よくある質問

決算が終わってから納税額を知らされます。もっと早く分かる方法はないでしょうか?

期中の数字が締まっていれば、決算を待たずにおおよその見込みは出せます。年度の途中で「今のペースならこのくらいになりそうです」とお伝えするのは、特別な作業ではなく通常の運用の範囲です。それでも直前まで分からない状態が続いているなら、記帳が追いついていないか、見込みを伝える運用になっていないかのどちらかである可能性が高いでしょう。まずは顧問に「次の納税はいくらになりそうですか」と聞いてみてください。

業績が落ちているのに、前年と同じ額の前払いを求められました。減らせないのでしょうか?

年の途中で求められる前払いは、前年や前期の実績をもとに決まります。そのため、今年の業績が落ちていても原則変わりません。ただし状況によっては、前払いの額を見直してもらう申し出が可能な場合があります。この申し出には期限があり、期限を過ぎると払いすぎた分は還付を待つことになります。通知が届いた時点で顧問税理士に「これは見直しの対象になりますか。申し出の期限はいつですか」と確認してください。

納税額が用意できないとき、どうすればよいですか?

いちばん避けたいのは、期限まで何も言わずに放置することです。期限の前に税務署(及び役所)に相談すれば、分割や猶予の相談に応じてもらえる場合があります。何も言わずに遅れた場合と、事前に相談した場合とでは、その後の扱いが変わります。顧問税理士がいるなら、まずどこに相談すればよいかと相談の進め方を確認してください。「払えない」と早く言えるかどうかが、その後の負担を左右します。

まずはお気軽にご相談ください

ヒアリングとご提供いただいた資料をもとに、今期の納税の見込みと、いつ何が必要になるかを一緒に整理します。今の顧問のままで問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。「こう聞いてみては」という助言だけで終わることもあります。セカンドオピニオンだけでも構いません。

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